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Date: Tue, 27 May 2014 01:06:58 +0900
From: HARA SHOHEI 
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Subject: [PHNetwork:000110] Re: 記事 鉄道・バスの障害者割引
To: publichealthnetwork@umin.ac.jp (PHNetwork)
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Hiroko Tajimaさま

> この障害者割引という制度は、そもそもどういう趣旨の制度なのでしょうか。

署名がないので、お立場がわかりませんが、
鋭い疑問、ありがとうございます。

社会的合意とは何を指すのか、それはちょっと横に置きます。
利用者への周知は十分とは言えないものの、
大手の鉄道やバスの場合、HPその他でも公表しています。


障害者割引の歴史について詳しく調べるのは、たいへんですが、
どうも身体障害者割引に先行して、戦傷病者(傷痍軍人)の無料扱いが国鉄に設
けられたようです。その後、身体障害者割引が、国営企業だった国鉄、次いで他
の鉄道やバスでも、制度化された。それからだいぶたち、関係団体の運動を経て、
内部障害や知的障害も割引の対象になった。

なぜ割り引くのか。これはいろんな論点を含んでいます。
時代によっても変化してきていると思います。

ひとつの考え方は介護者の同行。
1人の移動のために、もう1人余分に運賃がかかると大変だから、半額ずつにす
る。今でも、介護者同行時しか割り引かないという鉄道もあります。
ただ、その場合でも、単独乗車は100キロ超に限って割り引くという、JRや
大手私鉄の制度の理由は、説明がつきません。

別の考え方は、低所得の人が多いから。
障害者団体の間にも、本来は、割引より所得保障があるべき、という意見があり
ます。とはいえ、そう言っていても、理想的な所得保障への道のりは遠いので、
当面は割引すべきだという意見が大勢のようです。
一方で、生活保護の人への交通機関の割引制度はありません。
(通院の移送費支給や、就労時の通勤費の控除は認められるが)

さらに別の考え方は、社会参加の促進。
移動がしにくく、あるいは閉じこもりがちだった人たちに、なるべく社会的な活
動をしてもらうために交通機関を利用しやすくする。社会参加の制約を解消する
手段としての運賃割引です。この場合は単独乗車も割り引くべき、となる。

私自身は、これがいちばん現代の障害者政策に合う考え方だと感じます。
そこに、障害者には低所得の人が多いという事情も加味して考えると、不合理で
はないように思います。
そして、少なくとも精神障害者を除外するのは不合理。

また、障害者割引は、まるまる損になるわけではない。
乗っても乗らなくても、電車やバスは走らせるのだから、割引することによって、
半額運賃でも乗る人が増えたら、経営に悪いばかりではない。


もちろん、企業としての交通機関が負担すべきか、という論点はある。
取材していると、とくにJRの本州3社は、営利企業意識が強く、身体障害・知
的障害の割引も、国鉄時代からあるから、いやいや続けている、という印象を受
けました。

ただ、都市間輸送には競争があるけれど、鉄道もバスも地域独占の部分は多い。
やはり公共交通機関だから、公共の役割はある。
公益性を考えて、鉄道事業に助成するべきだと思います。
ただ、大いにもうかっている鉄道会社にまで、それは必要か。


交通機関の割引の趣旨は何か、と考え出すと、いろいろあります。

小児の運賃が半額なのは、なぜか。
学生割引、通学割引があるのは、なぜか。
高齢者にも割引すべきではないのか。

あるいは美術館・博物館などの障害者割引や、学生割引の趣旨は何か。

大学生や院生の討論のよい題材になりますね。



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原 昌平  hara4142@yomiuri.com
読売新聞大阪本社・編集委員(精神保健福祉士)
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