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Date: Thu, 18 Jun 2015 22:51:10 +0900
From: HARA SHOHEI 
Reply-To: publichealthnetwork@umin.ac.jp
Subject: [PHNetwork:000331] 記事 尼崎市の就労促進相談員 林美佐子さん
To: publichealthnetwork@umin.ac.jp (PHNetwork)  ,hara4142@yomiuri.com
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原@大阪読売です。(重複受信の方はすみません)
(直接関係ないテーマのMLの方も、ご関心がなければ、申し訳ありません)

6月18日(木)の読売新聞大阪本社版夕刊の大型インタビューの欄で、
尼崎市の就労促進相談員 林美佐子さんを取り上げました。写真つき。

関西都市圏の夕刊だけの記事です。
ただし岡山、広島、鳥取、島根、四国4県、福井は、24日の朝刊地方版に載る
予定です。今のところ、ネットには載らない見込みです。

(以下、著作権の関係でHP・ブログ類への全文に近い転載は禁止)
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【語る聞く】 尼崎市の就労促進相談員 林美佐子さん 46
20150618 読売大阪夕刊 1面・3面

 「スーパー非正規公務員」と言ってよいだろう。林美佐子さんは、兵庫県尼崎
市の福祉事務所で生活保護受給者の就労促進相談員を続けて13年余り。嘱託職
員ながら、飛び抜けて多数の就労を実現してきた。彼女の支援は、どこがすごい
のか。

■寄り添い 前向く力  
 一緒に泣いて、笑って、考える

 「働かんでええよ」。生活保護を受けている人の就労促進が仕事なのに、兵庫
県尼崎市の林美佐子さんの支援は、そんな言葉から始まったりする。自身も非正
規職員で、障害を持つ子を育てるシングルマザー。「時間をかけて相手の話を聴
き、本気で寄り添えば、人はきっと前向きになれる」という。
 (編集委員 原昌平)

 「働かなきゃいけないんですよねえ……」
 がん手術後の夫と子どもの世話、実家の親の介護に追われ、生活保護を受けて
いる女性は、面談の時、絞り出すような小声でそう言った。
 林さんは「働かんでもええで」と返した。
 「心を解きほぐすほうが先。仕事の話はせず、日記をつけるよう勧めました。
そしたら、日記に添えて色鉛筆で描いた風景画が素晴らしい。彼女は歴代の担当
ケースワーカーから『絵を描くひまがあったら働いて』と言われてきたけど、私
は、ずっと描き続けてね、と伝えたんです」
 やがて、生きる意欲を取り戻した女性から、こんな言葉をもらった。
 「みさ姉(ねえ)に出会っていなかったら私、死んでたかも」
     ◆
 生活保護を受けている世帯の8割近くは、高齢者だけの世帯か、世帯主が病気
や障害を抱えているか、産前産後か。そういう事情がなくて働いていない場合、
福祉事務所は就労を指導する。働く能力の活用は、保護を受けるときの要件とさ
れている。
 「でも、傷ついて倒れ、不安を抱えている人に、義務ばかり押しつけても、う
まくいきません。私の場合、ハローワークに同行したり求人情報を紹介したりす
ることはほとんどない。本人の気持ちがないと、たとえ就職できても長続きしな
いから」
 じっくり取り組むのは「就労以前の問題」だ。まずは信頼関係を築いていく。
 「成育歴、挫折したこと、裏切られたこと、やけになったこと、逆に自分が輝
いていた時期……。とことん話を聴いて、その人が弱った根源にあるものを理解
する。一人ひとりに物語があります。解決方法はすぐに見つからなくていい。泣
きたいだけ、泣けばいい。一緒に泣いて、一緒に笑って、一緒に考える」
 「悩みや苦しみを打ち明けるうちに、人は少しずつ変わってくる。自信を取り
戻した人は、夢や希望を思い出し、自分の足で立って求職活動をできるようにな
るんです。大事なのは、その人が自分らしく生きていくこと。就労は手段の一つ
にすぎません」
     ◆
 福祉の仕事に入ったきっかけは、自身の体験にある。
 もとは保育士。26歳で結婚したが、夫が働こうとせず、32歳で離婚。2歳
の子と6か月の子を抱え、どうやって働こうかと悩んで市役所へ電話した。あち
こち回された末、つながれたのが福祉事務所。職員は横柄な口調で、窓口へ直接
来るよう求めた。
 「母子なんでしょ。生活保護、受けたいんでしょ」
 ちょっと待って。何でそう決めつけるん? 私は相談したかっただけなのに……。
 翌年、尼崎市が初めて募集した就労促進相談員に採用された。手探りの取り組
みだったが、これまでに林さんの支援で仕事に就いた人は約400人。経済的に
自立して保護を卒業した人もいる。
 「虐待されて育った人、軽い知的障害や発達障害の人、アルコール依存の人な
ど、困難を伴うケースをたくさん受け持ちました。私の長男は自閉症で、長女も
一時、不登校。その体験も、障がいを持つ人たちへの支援に生かすことができま
した」
 服役歴のある人も支援の対象だ。元暴力団関係者のいかつい男性のアパートを
単身、訪問したこともある。「おもろいネエちゃんやな」。かかわりを続けるう
ち、男性は清掃のボランティアを始めた。
     ◆
 尼崎市に14人いる就労促進相談員は、週4日勤務、1年契約の嘱託。月給は
17万円台、手取りで13万円余り。厚生労働省から頼まれて研修で講演するこ
ともある林さんだが、収入だけで見れば、自分が保護を受けてもおかしくない。
 「正直、生活は苦しいですよ。ただ、ケースワーカーと違って指導・指示の権
限を持たないからこそ、できることもあると思うんです」
 「権力」を持たず、気持ちで接するということだろう。
 「ずっと優しくしてるわけじゃないですよ。向き合って真剣に怒ることもある。
『あきらめたらあかんで』『逃げたらあかんで』って」
 「人が、自分の人生の問題に向き合うと、すごいパワーが出てくる時があって、
顔が一瞬に変わる。その瞬間に立ち会える。私がサプライズと元気をもらってる
んです」

■はやし みさこ
 1968年、尼崎市生まれ。短大を卒業後、保育士、学童保育指導員アルバイ
トなどを経て、2002年度から尼崎市福祉事務所の就労促進相談員。昨年12
月に『顔をあげて。そばにおるで。〜尼崎市の就労促進相談員の仕事〜』(メタ
モル出版、税別1380円)を刊行した。

■取材後記
 生活保護の利用者に対し、世間の目の多くは冷たい。支援にあたるケースワー
カーには、労を惜しまず熱心に取り組む人がいる一方で、上から見下ろす態度の
人も少なくない
。そういう接し方が、保護を受ける人々をよけいに弱らせているのではないか。
 好んで貧困になる人はいない。保護を受ける暮らしもけっして楽ではない。も
ちろん働ける人には働いてもらうべきだが、本人を責めることが前進につながる
だろうか。
 否定されると、人の心は折れる。何かを強いられると、心はしぼむ。林さんは、
人をありのまま認めるアプローチを自分で構築してきた。福祉とは人を大切にす
ること。原点を見る思いがした。
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原 昌平  hara4142@yomiuri.com
読売新聞大阪本社・編集委員(精神保健福祉士)
〒530−8551 大阪市北区野崎町5−9
業務用携帯  080-2180-1373
個人用FAX  020-4622-0765
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原記者の「医療・福祉のツボ」
http://www.yomidr.yomiuri.co.jp/page.jsp?id=95515