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Date: Tue, 22 Dec 2015 00:40:23 +0900
From: HARA SHOHEI 
Reply-To: publichealthnetwork@umin.ac.jp
Subject: [PHNetwork:000416] 安倍政権が始めた「社会政策」
To: publichealthnetwork@umin.ac.jp (PHNetwork)  ,hara4142@yomiuri.com
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原@大阪読売です。(重複受信の方はすみません)

以下、12月初めの「京都保険医新聞」に書いたものです。ご参考まで。
(会社とは関係なく、あくまでも個人の論考です)
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◆安倍政権が始めた「社会政策」
 雇用・生活を中心とした社会政策に、安倍政権が本格的に乗り出した。
 アベノミクス第2ステージと称して9月に首相が掲げた「1億総活躍社会」の
柱は、<1>強い経済=GDP(国内総生産)を600兆円に増やす<2>子育
て支援=国民が希望する出生率を1.8に上げる<3>社会保障=介護のための
離職をゼロにする−−である。
 とうてい無理な目標だ、実現の具体策が見えない、戦時中のスローガンを思わ
せる、といった反応が多く、世間の受けはあまりよくないが、筆者は、けっこう
高度な政策展開だと感じている。
 首相は、1億総活躍国民会議の初会合で、<みんなちがって、みんないい>と
いう金子みすゞの詩を引きながら、「十人十色。それぞれが特色と生きがいを持
てる社会を創りたい」と説明した。
 「若者も年寄りも、女性も男性も、障害のある方も、難病を持っている方も、
大きな失敗をした人も、みんなが活躍できる社会を創るために、あらゆる制約を
取り除いていきたい」とも語った。
 立派な理念であり、誰も反対できないだろう。統制指向という首相のイメージ
を変える言葉遣いも交えている。
 ベースにあるのは、人口減少に伴って経済力が衰えることへの危機感で、人口
と経済の維持が目的のようだが、国民会議のメンバーになったタレントの菊池桃
子さんが発言したように、社会からの排除をなくす「ソーシャル・インクルージョ
ン(社会的包摂)」の政策と読むこともできる。
 11月にまとめた緊急対策では、▽最低賃金を毎年3%上げて全国加重平均で時
給1000円を目指す▽低年金者に3万円の一時金を配る▽保育施設の整備目標
を50万人分に引き上げ、介護施設を新たに50万人分整備する−−といった方針ま
で打ち出した。
 なぜ今、社会分野の政策を看板に掲げたのか。
 政治的に見ると、世の中の主要議題を安保・憲法・沖縄から、民生・経済へ移
す狙いがありそうだ。来年の参院選に向け、この看板は強い。とりわけ雇用や社
会保障は、民主・共産・社民などが重視してきた分野であり、お株を奪われる野
党は苦しくなる。
 政策面から見ると、経済が好転しない最大の要因が、国民の消費低迷にあり、
その背景に低賃金・低年金があるという認識が広がってきたからだろう。それ自
体は、正しい判断である。大企業と富裕層が「ため込み」を増やし、大多数の国
民の暮らしが厳しい状態では、経済は回らない。
 その一方で、社会保障費の削減、法人税の引き下げ、労働規制の緩和といった
新自由主義的な政策を進めることは、まるで矛盾する。
 日本の経済と社会が抱える根本課題を直視すれば、貧困、格差、社会保障が浮
かび上がらざるをえない。総活躍を強調するほど、その矛盾は明確になっていく
だろう。
 とはいえ、そういう問題理解が、国民にすんなり浸透するかどうかはわからな
い。
 右派政権が社会政策を進めるのは、必ずしも意外なことではない。ナチスドイ
ツは保健医療や雇用政策に力を入れた。なめてはいけない。

<2015年12月5日 京都保険医新聞 続・記者の視点55>
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原 昌平  hara4142@yomiuri.com
読売新聞大阪本社・編集委員(精神保健福祉士)
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個人用FAX  020-4622-0765
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原記者の「医療・福祉のツボ」
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